【物語風日記】あんバターパンから学んだこと
私には秘密がある。
それは過食症であるということ。
友達には軽くノリで言ったことがあるけど、親には意地でも言ったらいけない。
親は「過食する人間」が嫌いな健康オタクのだから。
でも私はこっそりと過食する。
ストレスが溜まっているからだ。
「あーあ、今日も始まった。」
毎日お金を使い込み、挙げ句の果てには太ってく。
最近の好みは菓子パンだが、これは親の大嫌いな部類の食べ物だ。
菓子パンは早死にするだの老けるだの、私に恐怖心を与え脅す。
だけどその日もスーパーへ、大量の菓子パンを買に行った。
メーカーとか種類とか、そんなのどうでも良い。
はやく過食がしたいから、早足でパンコーナーへ。
何を選んだかも分からないくらいのスピードで、商品にどんどん手を伸ばしていった。
だから、何を買ったかよく分かっていない。
だか、あんバターパンだけは欠かせない、絶対的「推し」である。
今日も今日とて推しを口に入れながら、ふと入っていた包みを眺めてみた。
「春のキャンペーン、抽選で3名様に10万円プレゼント?ほおう。」
さっそくスマホを取り出し、QRコードをスキャンして何となく応募した。
「10万円当たったら何しようか。」
パンを無心に食べる隙に、妄想もしてみたものだ。
それから半年が経過。
仕事から帰ってきた親はなぜか鬼の形相をしている。
さっぱり何のことか分からなかったが、一通の封筒を見せてきたとき、ハッと思い出した。
いつの日か応募した、あのあんバターパンの10万円に当選していたのだ。
ただ、お金が貰えて幸せな気持ちになるのは束の間。
これで親に菓子パンを食べていたことがバレたから、結局は説教される羽目になった。
何かの秘密を守りたいのなら、遠い未来まで徹底的に対策をしなければならないことを学んだ日である。
これは実話を基にしたフィクションです。